がんゲノム医療によるがん治療のオーダーメイド化の取り組み

がん

 最近NHKの特集でがんゲノム医療がとりあげられました.興味深く見られた方もおられるかと思います.私はたまたま見ました・・・

 外来でも見た人がいて,「あれってどうですか?」など聞いてこられました.

 手術が適用にならない進行したがんは通常,抗がん剤による治療を行うことになります.抗がん剤はたくさんの種類があり,どのお薬を使うかはがんの種類によって決まっています.

胃がんではA,B,Cのお薬が,大腸がんではA,D,Eのお薬が使える,などとなっております.

お薬というのは臨床試験でその効果が示されて,保険適応とならないと使うことができません.

 一言で胃がんといってもいろいろなバリエーションがあり,確かに全体としてみれば保険適応となった薬が効くのですが,個別で見れば全然効かないものがあり,逆に保険で認められていないものが効く可能性のあるものがあります.

 これからはがんの遺伝子を調べて,どのお薬が効くかが分かったうえで抗がん剤治療を行っていくようになります.

患者さん
患者さん

じゃー早速,主治医の先生に調べてもらうように頼もう!

Doctor_man
Doctor_man

そうは簡単にいきません.

 まず,主治医の先生があまり知らない可能性があります.

 がんゲノム医療はまだ一般的ではなく,抗がん剤を使っている先生方の中でもあまり詳しくない方もおられます.

 さらに,いま行っている一般的な治療(標準治療)ができなくならないとだめです.

 標準治療は1次治療,2次治療,と続いていきますが,多くは3,4段階で使える抗がん剤がなくなります.そうなったら普通は抗がん剤治療は終了となり,緩和医療へと進んでいきます(もちろん抗がん剤治療と並行して緩和治療も行われます).

 がんゲノム医療は,標準治療が終わった段階でしか行えません.

 最初から調べて効く薬を使ったらよいではないかという意見は患者さんだけでなく,医師の中にも当然あります.

 しかし,現状では非常に高額ですべての患者さんに適応する予算がありません.今はまだ試験的に行われる段階なので対象患者さんを標準治療が終わった人に絞っています.

 理屈はわかりますが,これが結構微妙で標準治療が終わった後に元気でいられる患者さんばかりではありません,標準治療が終わって,遺伝子を調べている間に病状が進行して,その恩恵にあずかれない可能性があります.

この点にはもう一つ問題があり,がん遺伝子を調べて結果を患者さんに説明しないと病院はお金をとれないのです.もし遺伝子を調べている間に患者さんが亡くなればその費用(約60万)を病院が負担することになるのです.そのため病院は確実に結果を伝えられる患者のみを選択し,予後がそこまで期待できない人には遺伝子を調べるというリスクを冒すことはしなくなります.

これはノーベル賞で有名になった免疫チェックポイント阻害剤も同じです.

 本当は早い段階で調べて,よく効くお薬を使えばいいのですができないのです.

ほかの問題として

 効きそうなお薬がわかっても,まだ実用化に至っていないものが多いことが挙げられます.

 ある種の抗がん剤が効きそうだとわかっても,そのような薬がまだ実用化されていないことが結構あります.将来的には多くの薬が実用化されるでしょうが,現時点では効きそうな薬がわかっても使えないのです.

 実際,遺伝子を調べても10%にも満たない患者さんしか抗がん剤を投与されません.残りは60万円かけて調べても空振りに終わります.

 とはいえ,このような取り組みを進めていくことで問題点や課題が明確になり,よりよい制度を作ることにつながっていきます.

 そのため,抗がん剤をやっている方は一度主治医の先生に「がんゲノム医療はどうですか?」と尋ねてみてください.

 主治医の先生がよくわからない場合は拠点病院へ紹介してくれるか紹介してもらってください.

参考:がん情報サービス

コメント

タイトルとURLをコピーしました